満ちるほどに
2021.01.08
知るほどに
知らないことに
気づかされ
満ちるほどに
わたしというものが
消えてゆく
何も知らず
何も持たずに
生まれてきたはずなのに
知らないことが
恥ずかしくなり
満月を恋しがる三日月のように
わたしは
満ちてゆくことを希(こいねが)った
三日月も上弦の月も満月も
みんなおなじ月だと気づいたとき
わたしというものが影を潜めた
空っぽになるほど満たされて
満ちるほどに空っぽになって
そして
ひとつになってゆく
no.27(『Japanist』No.39掲載)